220425-考え抜く

職業柄、たくさんの家具・照明器具などを見る。
カタログをはじめ、雑誌やお店、SNSを通じても。

ずっと見ていてあることに気付く。
それらには値段が付けられていてお金さえ出せればすぐ手に入るということに。

「当たり前だろ!」と言葉が飛んできそうだが
これだけ何でも直ぐに見つけられ
世界中から欲しいものを手に入れられるようになったのはここ数年の出来事。
かく言う僕だってニューヨークからヘンテコなレンズを購入して
その恩恵を受けている。

欲しいものがお金というフィルターのみで
持てる人、持てない人に分けられているだけの世界になってしまうと
それには価値があるのか?という疑問が出てくる。

実際、各メーカーがAniversary(記念品)や限定品、コラボ商品と称して
希少性を生み出し、差別化をはかることでモノを売ろうとする流れや
アンティーク、ハンドメイド市場が活気付くのもそういった背景があるからだと
納得できる。

既製品をそのまま使うことを良しとしなかった宮脇檀。
当時彼の美意識に耐える、既製品が無かったという時代背景もあるが
とにかく考え抜いて、図面を描いてその場にあった納まりを導いて現実にしている。

今のように既製品のクオリティーが良くなってくると
『既製品で良いよね』という場面に頻繁に直面する。
以前にも描いたがその場面での葛藤は結構あって、
つくることに対して大義名分や志を常に持っていないと
図面を描くことが、カタログからコマシな商品を探して選ぶだけの作業になってしまう。
悪いことでもないのだが、建築がそれだけで終わってしまうのは何だか悲しいし
いきつく先は、ちょっとセンス良ければ誰でもできるよねってなってしまいそう。

この旧R邸の端々の緊張感ある納まりは
空間の質をキリっとさせているし、
操作された各部の寸法は包み込まれるような心地よさを感じさせてくれる。

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kenoba
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# by tsuji-chika | 2022-04-25 17:06 | 『m』 | Trackback | Comments(0)

220419-キッチン

キッチンの床は、ダイニングからは150mm下がっている効果もあって
ダイニング側から見ると自然と視線が下向きとなる。
ちょうど、その先にコーナーの隅切り窓があって視線が抜けていくので
閉塞感が緩和されている。
しつこく書いているが、この窓の効果は大きい。

作品集によるとこの窓
『帰ってくる夫を発見する為のコーナー窓』とのことで
前面道路の帰宅してくる側に向けられているのも面白い。

キッチンカウンターの高さは810mmと今の高さからすると少し低い。
吊り戸や収納が小気味よく配置されいて
下の収納の内部が少しずつ作りが違っていて、米びつ用の引き出しなんかもある。

2階にキッチンを配置する場合は
ゴミ出しの問題も解決しておく必要がある。
ここではダストシュートが設けられ
下の駐車場奥にある扉内に落ちる仕掛けとなっている。

もちろん、インターフォンや電子錠(40年前!です)
もキッチン廻りの壁にレイアウトされ
いちいち下に降りていかなくても来客に対応できるようになっているところなんかも
ぬかりない。

ここまで徹底してはじめて
うまく機能するようになっている。

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# by tsuji-chika | 2022-04-19 09:02 | 『m』 | Trackback | Comments(0)

m-220414-ダイニング

ボールド(曲面)天井の空間。
低い所で2100、高い所で2500mmと親密感が漂う。
部屋は北側に位置し順光に照らされた外の景色が室内に飛び込む。
さながら巣の中から外を見るような効果が生まれ
大きなFIX窓があるものの外からの視線はほとんど気にならない。

その窓を背にベンチが設けられ
米松のテーブルとその上には照明器具兼用の排気フードがある。
テーブルの中央には蓋が付けられていて中にはガスコンセントが入っている。
テーブルの高さは680mmで通常のテーブルよりもかなり低い。
それに合わせてYチェアもレッグカットされている。
当時から使われている(作品集にも載っている)ということは40年選手。
Yチェアって丈夫なんだなぁと改めて実感。

キッチンとの間には
3枚の引き戸が入れられていて
宮脇さんの考えでは、食事側からは流しなどのゴタゴタを見たくない
というのがあって、オープンキッチンにしながら、仕切りたい時には普通の
ダイニングとキッチンが分けれられるようにしている。
この建具は他の宮脇作品にも登場するのでこだわりの納まりだと思います。
他の建築家の作品ではあまり見ることがないので珍しい建具。

今は壁付けのエアコンが付けられていますが
本来は天井裏にファンコイルが入っていてボールドの両袖と天井中央の
凹部から冷暖房を給排気する仕掛けとなっている。

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# by tsuji-chika | 2022-04-14 18:35 | 『m』 | Trackback | Comments(0)

m-220412-既製品

宮脇作品に多く登場する船舶用の丸窓。
当時、住宅用と称されてカタログに掲載される既製品に対して
宮脇さんの美意識に耐えられるものはなく、
実際、結構厳しい言葉でそれについて語っている。

安手のコマーシャリズムが付着していない
実用のみで作られたインダストリアルなこの丸窓が
積極的に使われてたのはよくわかる。

今でも問題なく機能し
コンクリートとの質感にもよくマッチしていて
質実剛健のつくりの良さは雨仕舞やガタツキのことなど
微塵も感じさせない安心感がある。

■コンクリートには水がうまく排水されるように溝が切られている
その溝が外壁の縦目地につながっていて壁の汚れが気にならない仕掛け
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# by tsuji-chika | 2022-04-12 08:58 | 『m』 | Trackback | Comments(0)

220408 考える量

2階に居間・和室・食事室・便所があって
3階は子供部屋1室で、1階に寝室と他の水廻りがある間取り。

周囲が建物で囲われる住宅街にあって
2階をリビングやキッチンとする
いわゆる逆転プランは一つの回答になる。

逆転プランのメリットはいくつかあって
①プライバシーを守りやすい
②採光・眺望を確保しやすい
③上に部屋がこないので構造的には屋根を支えるだけで良く
柱や壁を減らすことができて開放的な空間が作りやすい
④生活をする為に強制的に2階に上がる必要があって
年をとってからも2階が物置と化して年に数回しか
上がらないということがなくなる。(階段を使うので足腰が鍛えられる)

もちろんデメリットも同じようにあって
①プランニングが難しい(動線が長くなる)
②ゴミ出しが不便
③来客時の応答が不便
④1階寝室の防犯対策が必要

こういったメリット・デメリットを
旧R邸では余すことなくきっちり模範解答のように解かれていて
特に居間はこの逆転プランのメリットがうまく反映されている。
■床はナラ無垢板。壁天井はEP塗り。
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作品集にはオーディオ好きで客人も多いお施主さんとある。
当時の写真を見ると椅子三脚置かれているあたりに
造り付けのソファー(W2600mm)が設置され
その他にアルフレックスのマレンコが置かれていた。
ARCOのスタンドライトが今でも残っていて、家具好きの夫人のセンスが光る。

東西の腰高収納には、オーディオ機器、暖房機(セントラルヒーティグン)、
間接照明が納められ、図面にはビロードが貼られたお酒のボトルストックまで
描かれている(窓の手前の蓋があるところ)。家具の樹種は米松。
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天井は勾配天井となっていてパネルによって仕上げられている。
意匠的にもリズムがあって素敵だし、反響も良さそう。
掃き出し窓の高さは1800mm、高いところで3395mmの
包み込まれるような空間で、さながらプライベートホールのような雰囲気が漂う。
広角の為、広く見えるが、実際は丁度良いスケール感で開放的で居心地が良い。
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天井がパネル式になっているのには理由があって
その中にはファンコイル(エアコン)が隠されている。
パネルのスリットから給気して
掃き出し窓の上から、吹き出すような納まりになっている。
メンテナンスの為に、
天井のパネルは滑車を廻すと天井全体が下がってくるようになっていると
図面には描かれている(今は使われていませんが)。
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まだまだあります(笑)。
南側の腰窓の外には蘭の栽培ができるように温室が設けられ
客人の目を楽しませていたとあって、掃き出し窓の外には月見がきるデッキもある。
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とにもかくにも考えている量が圧倒的なのはご理解頂けたかと思います。
それも既製品を使わずに
これらすべてを図面(もちろん手描き)におこして実現させている。
眼を養い手を練れ』の言葉に改めて説得力を感じます。

kenoba
辻健二郎建築設計事務所
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# by tsuji-chika | 2022-04-08 18:19 | 『m』 | Trackback | Comments(0)